皇室について思うこと
2026-08-20

中学から大学まで、私は天皇制についてほとんど無関心でした。私たちの世代にとっ て、昭和天皇には、まるで二つのお姿があるように感じられます。戦時中の天皇と、 戦後の象徴天皇としてのお姿があまりにも違って見えたからです。
 
一方、同じ時代を長く生きてきた上皇陛下には、私はどこか親しみを感じています。 上皇后美智子さまのお人柄の影響もあるのでしょう。現在の天皇陛下についても、「 天皇」という立場以前に、一人の人間として素晴らしい方だと感じ、いつも温かい気 持ちで拝見しています。では、今の日本人は皇室をどのように考えているのでしょう か。AIが急速に発達している今だからこそ、私たちは科学技術や未来のことだけでは なく、「人間とは何か」「社会とは何か」「日本とは何か」を、もう一度考える必要 があるのではないでしょうか。私の見る限り、人類が大きな岐路に立っている今でも 、「なるようにしかならない」と考えている人が多いように感じます。
 
私は現在、「温故知新」という季刊誌を発行しています。「故きを温ねて新しきを知 る」。未来だけを見つめるのではなく、過去を振り返り、そこから学ぶことも大切だ と思うからです。天皇制についても同じです。これからの天皇制がどうあるべきかに ついては、さまざまな意見があって当然でしょう。それでも私は、日本が長い歴史の 中で受け継いできた皇室という存在は、大切にしていくべきだと考えています。長い 歴史を振り返れば、皇室という存在が日本人の心をつなぐ役割を果たしてきた時代も ありました。その意味で、私はプラスの面が大きいと考えています。
 
1965年、私はブラジルのサンパウロに3か月間滞在しました。その折、アルゼンチン のブエノスアイレスを訪れ、ラプラタ川に日の丸を掲げた船を見つけたことがありま す。外国に長く滞在していたからでしょう。日の丸を見つけた瞬間の嬉しさ、そして 何とも言えない懐かしさは、60年以上経った今でも目に焼きついています。海外へ出 て初めて、自分が日本人であることを強く意識した瞬間だったのかもしれません。 私は左翼でも右翼でもありません。理性や論理を重んじたデカルトよりも、理性だけ では捉えきれない人間の心や直感を大切にしたパスカルの方に惹かれます。
 
人間は、理屈だけで生きているわけではありません。喜び、悲しみ、懐かしさ、愛情 、そして祖国を思う気持ち。人間は感情を持つ生き物だからです。90歳になった今 、8月という月に戦争と平和、そして日本という国について、改めてそんなことを考え ています。